青春の詩歌
監修・作品解説:中村稔
青春とは、いつの時代においても、文学者にとって常に重要な創作モチーフの一つで あり、幾度となく文学作品において取り上げられてきた主題です。本展ではその中でも特に、青春を歌った俳句・短歌・現代詩作品を、俳人・歌人・詩人たちの 直筆資料を通じてご紹介致します。
島崎藤村、与謝野晶子、斎藤茂吉、佐藤春夫といった近代文学を代表する作家たちの古典的名作をはじめ、加藤楸邨、塚本邦雄、安東次男、石田波郷といった戦後の俳壇、歌壇、詩壇において中心的役割を果たした作家たちの書、そして、現在活躍中の俳人・歌人・詩人たちによる揮毫作品です。観覧者のみなさまには、それぞれ描かれた時代の異なる作品にふれて、多様な青春のあり方をご覧いただくと共に、作家たち自身の手によって描かれた書軸、原稿などの筆跡を通じて、青春を歌うことばの力強さを感じていただきたいと思います。
主な出品資料
島崎藤村 「千曲川旅情のうた」(小諸懐古園詩碑原本)
斎藤茂吉 短冊 「のどあかき玄鳥ふたつ屋梁にゐて足乳ねのはゝはしにたまふなり」
与謝野晶子 短冊 「やは肌のあつき血しほにふれもみでさびしからずや道を説く君」
佐藤春夫 軸 「断章」
三好達治 色紙 「山なみ遠に春はきて辛夷の花は天上に雲は彼方に帰れ共帰るへしらに越ゆる路」
石田波郷 短冊 「初蝶や吾か三十の袖袂」
塚本邦雄 短冊 「宍道湖のしんじつ妻にはるかなる」
安東次男 色紙 「悲運にも似たり林檎を枕とし」
加藤楸邨 軸 「隠岐やいま木の芽をかこむ怒濤かな」ほか、愛用遺品など
沢木欣一 色紙 「雪白の溢るゝごとく去りにけり」ほか、俳句手帳
大岡昇平 色紙 中原中也「夕照」 …など
■ 現在活躍中の歌人・俳人・詩人による揮毫作品
荒川洋治、安藤元雄、井坂洋子、伊藤一彦、宇多喜代子
梅内美華子、大岡信、岡井隆、尾崎左永子、角川春樹
金子兜太、栗木京子、黒田杏子、小池昌代、小島ゆかり
坂井修一、佐佐木幸綱、新川和江、高野公彦、鷹羽狩行
高橋順子、高橋睦郎、坪内稔典、永田和宏、中村稔
長谷川櫂、馬場あき子、平出隆、穂村弘、米川千嘉子 ほか
青土社より『青春の詩歌』刊行