樋口一葉・その文学と生涯
編集:中村稔
女性としてわが国で初めて文筆で一家の生計を立てることを志し、「たけくらべ」「大つごもり」等
不朽の名作を遺して明治29年に24歳で夭折した樋口一葉。
樋口家寄贈の貴重な資料から、一葉の文学世界とその生涯をたどります。
「たけくらべ」ほかの原稿・未定稿、困窮の日々を綴った日記、遺愛の机・文具、小説の師・半井桃水、馬場孤蝶はじめ「文学界」同人、斎藤緑雨等が一葉に宛てた書簡を多数展示します。
部門構成と主な出品資料
第1部 一葉文学の世界
萩の舎で学んだ古典の知識と自身の生活を活かし、「文学界」同人から刺激を受け生まれた作品を紹介。
・「大つごもり」未定稿
・「たけくらべ」未定稿
・森鴎外らが一葉を絶賛した「三人冗語」掲載の雑誌「めさまし草」(明治29年4月) など
第2部 貧困の深淵から小説家へ
十六歳から死に至るまでの日記を中心に紹介。
・「鳥之部」と呼ばれる日記は父則義が亡くなって保険手続きをするくだりなど
・半井桃水の指導のもと小説家を志して一年、「森のした艸」には「我は錦衣を望むものならす」と気概を書きつける
・「流水園雑記」には下谷龍泉寺町で荒物屋を営むかたわらのもどかしい執筆生活を記す など
第3部 一葉をめぐる人々
「萩の舎」「文学界」など交流のあった文学者を紹介。
・中島歌子の添削和歌
・半井桃水へ小説の構想を相談する手紙
・馬場孤蝶、平田禿木、戸川秋骨らの一葉宛書簡 など
ほかに一葉による手紙の書き方講座、『通俗書簡文』コーナーも。