文学事典のこれまでとこれから―デジタル版『日本近代文学大事典』リリース記念―
2022年3月5日(土)―3月26日(土)
開館時間 | 午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで) |
観 覧 料 | 一般300円(団体20名様以上で一人200円) 中学生・高校生100円 *「震災を書く」展と同時開催 |
休 館 日 | 日曜日・月曜日・3/22・3/24 *3/21月 の祝日は開館 |
編集委員 | 安藤宏・紅野謙介・中島国彦・宗像和重(日本近代文学館理事) |
紙からデータベースへ
日本近代文学館は、創立10年にしてこの『日本近代文学大事典』という大きなプロジェクトに挑み、6年の作業をへて刊行しました。その1977(昭和52)年にはすでに日本の近代文学は質量ともに高い評価を得て、世界でも注目されるようになっていました。文学に惹かれるまま、人物名や新聞雑誌、事項など、次々と糸をたぐるように新たな知識と情報を得ることができる、それは文学という巨大都市の案内図として機能したのです。もちろん、それ以前から文学事典は読者の需要を獲得しつつありました。その最高峰が『日本近代文学大事典』だったのです。今はインターネットによりさまざまな情報を簡単に入手することができます。しかし、その情報は果たして正確なのか、読者は確証をつかめません。情報提供者の正統性が問われることになります。増補改訂デジタル版は、日本近代文学館が編集主体となって公表されるものですから、安心してご利用いただけます。今回の展示を通して、文学事典にはどのような歴史があるのか、原版はどのように作られたのか、そして今回のデジタル化は何をもたらしたのか、後援してくださった日本文藝家協会の紹介とともにご覧いただき、文学館の総力をあげた日本近現代文学のデータベースをフル活用していただければ幸いです。
(編集委員 紅野謙介)
● 部門構成
第1部 文学事典——鑑賞と研究の道しるべ
文学をめぐってどのような事典・辞典が刊行されてきたのか、明治からの流れを紹介します。また、同じ項目について、どのように記述されているか、異なる事典を比較して見ることで、時代ごとの文学観をとらえ直します。
第2部 画期的だった元版『日本近代文学大事典』の達成
1977年に刊行された元版『日本近代文学大事典』はそれまでの文学事典をはるかに凌駕する情報量で、人名の項目数だけでも5600名分に上りました。研究者だけでなく、作家にも寄稿を依頼し、全体の執筆者数は800名を超えました。これらの原稿の一部をご紹介します。
第3部 増補改訂とデジタル・シフト
45年ぶりにリニューアルするデジタル版『日本近代文学大事典』。元版の不備の修正や追補を施し、新規・追加あわせて289項目が補充されました。デジタル化によって検索機能が飛躍的に高まり、人名のほか、年月や地名、経歴、初出紙誌、版元など、様々な横断検索も可能です。会期中、館内にデモンストレーション機を設置しますので、デジタル版をぜひお試しください。
第4部 日本文藝家協会と日本近代文学館
日本文藝家協会は1926(大正15)年に、文学者の権利の擁護を目的に発足、言論の自由の擁護、執筆者の生活の安定などを目的に、職能団体として文壇の根幹を支えています。日本近代文学館は開館するまでの設立準備会事務局が日本文藝家協会に置かれ、当初から協会とは密接な関係にありました。協会は創立100年記念事業の一環として、『日本近代文学大事典』増補改訂版編纂事業への資金援助を決定し、その協力のもとに、今回、事典の増補改訂が実現しました。協会と当館の歩みを紹介します。
同時開催
3・11 文学館からのメッセージ 震災を書く
*300円でふたつの展覧会がご覧いただけます。