海、山、人、黙(もだ)す——震災と言葉
2025.01.072025年2月22日(土)~3月29日(土)
開館時間 | 午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで) |
観 覧 料 | 一般300円/中学・高校生100円(20名以上の団体は一人200円) |
休 館 日 | 日曜・月曜・2/25(火)・2/27(木)・3/27(木) |
編集委員 | 小池昌代(詩人・作家、当館副理事長) |
本展について
立春を過ぎ、まだ肌寒さの残る頃、当館では毎年、震災展を開催してきました。
今年は原点に立ち返り、実作者たちの肉筆による、現代の俳句・短歌・詩作品を中心に展示します。
本展のシリーズは、詩人であり当館名誉館長である中村稔氏の呼びかけにより、2013年から始まったものです。東日本大震災の起こった年(2011年)から、今年で14年。その間も、震災地震・原発事故の影響は残り続け、感染症の世界的大流行を挟んで、私たちの社会は大きく変わりました。大地をえぐった傷は、今、見えない裂傷となって、心の深部、生活の深部に達しているように思えます。日本社会の構造そのものが、今もがたがたと揺れているのです。
あのとき、波は壁となり、陸を侵し、船は陸にあがり、看板の文字はばらばらになった。具体的な意味でも抽象的な意味でも、言葉は破壊され、直喩も暗喩も存在意義を失いました。言葉の本質は虚しいものです。現実をなぞろうとして、現実は常に言葉よりも大きい。言葉が作る世界と現実の世界。その、ずれ、きしみ。悲劇を前に、私たちは死者たちの沈黙に寄り添い同意する他はありません。表現は、そこを乗り越えて出てきます。
震災に、厳密な意味で、ピリオドを打つことはできません。東日本大震災を切れ目でなく、大きな流れのなかで見ていきたい。その観点から、今年の展示のなかには、震災前の作品もわずかに混ぜてあります。
昨年、2024年に私たちは、現代を代表する詩人を次々失いました。白石かずこ、新川和江、谷川俊太郎。詩人たちの肉筆を本展に眺めながら、埋めようのない欠落感を味わっています。しかし失われたものの穴を埋める必要はないのかもしれない。今を生きる私たちは、常に死者と共に在るのですから。
今年も春が巡ります。皆様それぞれの、震災の記憶とつなぎ合わせながら、言葉とその奥に横たわる沈黙に、触れていただければ幸いです。
小池昌代(詩人・作家 本展編集)
〇展示予定作家(50音順・敬称略)
〈俳句〉 宇多喜代子 金子兜太 高野ムツオ 照井翠
長谷川櫂 宮坂静生 渡辺誠一郎
〈短歌〉 岡野弘彦 梶原さい子 栗木京子 小島ゆかり
今野寿美 高木佳子 永田和宏 花山多佳子
馬場あき子 穂村弘 山田航 米川千嘉子
〈 詩 〉 伊藤比呂美 金時鐘 季村敏夫 白石かずこ
新川和江 高橋順子 谷川俊太郎 中村稔
平田俊子 藤井貞和 若松丈太郎
〇座談会を行います
座談会登壇者は、各詩型に携わる、被災経験を持つ表現者たちです。震災直後から今に至るまで、各表現においては、どのような葛藤があっただろうか。当事者性の有無、言語化することの是非、倫理性、タブー、死者との応答など、詩歌の本質を考えあわせながら、震災をめぐる言語表現について、実作者の立場から、それぞれ自由にお話しいただきます。
日時 : 2025年3月22日(土) 13:00~15:30
登壇者 : 季村敏夫 (詩人)
高木佳子 (歌人)
渡辺誠一郎 (俳人)
司会 小池昌代
会 場 日本近代文学館 講堂
参加費 一般 1,500円 会員・学生 1,000円
(展示観覧料込)
申 込 事前予約制。定員60名。先着順
1月7日(火)よりメールとTELで受付
MAIL zadankai☆bungakukan.or.jp (☆を@へ変更ください)
TEL 03-3468-4181