北原白秋生誕140年 白秋万華鏡
2025年4月5日（土）―6月14日（土）
開館時間 午前9時30分～午後4時30分（入館は午後4時まで）
観覧料 一般300円（団体20名様以上は一人200円） 中学生・高校生100円
休館日 日曜日・月曜日（祝日は開館）・4/24・5/7・5/22
編集委員 中島国彦（早稲田大学名誉教授・館理事長）・坪井秀人（早稲田大学教授）
主 催 公益財団法人 日本近代文学館
北原白秋生誕140年 白秋万華鏡
多面体のまばゆさ
文学の創作において特異な才能とセンスというものがこれ以上ないかたちで凝縮してあらわれる場合がある。北原白秋という作家の多産かつ多面的な創作の豊饒さもその事例にあたるだろう。1988年に完結した岩波書店版『白秋全集』は別巻を含めて全40巻。うち詩集は5巻、歌集は7巻、童謡が4巻、歌謡集が3巻、それ以外は評論や紀行文等の散文、それに詩歌ノートということになるが、詩歌の分野でこれだけ多様で大規模の数の作品を残した作家は他にはいない。
詩集では1909年の『邪宗門』、1911年の『思ひ出』に始まり、推敲を行いながら完成には至らず没後に刊行された「少国民」のための戦争詩集『大東亜戦争少国民詩集』（1943年）に至るまで、歌集では1913年の『桐の花』に始まり、晩年に眼を患って視力を失っていく中で編まれた『黒檜』（1940年）などに至るまで、詩と短歌の創作はほとんど途切れることがなかった。しかも晩年には『新頌』（1940年）で新しい詩形の実験を行うなど、白秋の詩歌のフォルムに対する探究心は最後まで衰えることがなかった。
しかし北原白秋といえば、私たちに馴染み深いのは、「雨」「あわて床屋」「からたちの花」「ペチカ」など、一定世代以上の日本語話者なら誰でも口ずさむことのできる童謡・歌曲や「ちゃっきり節」などの新民謡の詩人、いや作詞家としての顔であろう。同時代、同傾向の詩人としては野口雨情や西條八十の名前も挙げることは出来るが、「赤い鳥」や「詩と音楽」などの雑誌での啓蒙的・批評的実践とも連動し、山田耕筰や鈴木三重吉、山本鼎ら他分野の芸術家たちとの共同作業を行うなど、大衆文化と文学とを包括する仕事を綜合芸術として展開したことにおいて唯一無二の存在である。
『邪宗門』に「万華鏡（カレイドスコオプ）」という評言を与えたのは木下杢太郎だった。私たちはいままさに「白秋万華鏡」と呼ぶべきその多面的世界をあらためて再評価するべき時にある。
（本展編集委員 坪井秀人）
● 部門構成
第１部 白秋詩歌の輝きの誕生 ―万華鏡の舞台裏
主な出品資料：
『邪宗門』構想綴（新発見資料）、『思ひ出』自筆訂正本
第２部 雑誌からみる白秋の生涯
主な出品資料：
雑誌「文庫」「スバル」「屋上庭園」「朱欒」など
北原白秋 内海信之宛はがき 1909年9月27日（「屋上庭園」創刊の協力依頼）
第３部 多様なジャンル・幅広い読者
主な出品資料：
北原白秋 原稿「唐津小唄」「戦ふ医学」
萩原朔太郎自筆楽譜「哀歌『城ヶ島』」
第４部 変幻自在な白秋―場所・空間の移動
主な出品資料：
北原白秋 河井酔茗宛はがき 1913年5月12日
北原白秋 草稿「草の葉つぱ」・「安別」
第５部 装幀へのこだわり
主な出品資料：
『思ひ出』『桐の花』『白金之独楽』など
第６部 文学者とのかかわり
主な出品資料：
河井酔茗・志賀直哉・木俣修宛書簡から
◆図録
A4判・42ページ
1500円（税込） 会員1200円
新発見資料「邪宗門」構想綴 全画像と翻刻を掲載
4月5日より販売
当サイト内WEBショップのほか、お電話でもご注文いただけます。
電話 03-3468-4181
◆記念イベント 編集委員対談「生誕140年、白秋の作品を思い出す」
出 演：中島国彦（館理事長・本展編集委員）・ 坪井秀人（本展編集委員）
日時：2025年 4月26日（土） 14 : 00～15 : 30 於：日本近代文学館 講堂
参加費：一般800円、維持会・友の会会員600円、学生500円
※展示観覧料込。維持会・友の会会員の方は会員証を、学生の方は学生証を当日ご提示ください。
※要事前申込（申し込み方法を3/14に公表します）
同時開催 川端文学の名作Ⅱ
川端康成記念室では、若き日の川端康成の活動に焦点をあてた「川端康成の青春」展を開催致します。一高時代、伊藤初代との恋、「文藝時代」の創刊など、その青春期ともいえる日々を辿ることで、川端文学の萌芽を探ります。
また自身の青春期のさまざまな体験に取材している「伊豆の踊子」のほか、青年期から壮年期へといたるなかで生み出された「浅草紅団」、「禽獣」といった初期川端文学の名作を、貴重な資料とともに紹介します。
●「十六歳の日記」 ●「新思潮」と「文藝時代」
●「伊豆の踊子」 ●「浅草紅団」 ●「禽獣」ほか
＊併設の川端康成記念室にて開催。特別展の観覧料（300円）で同時にご覧いただけます