編集者かく戦へり
2024年9月14日(土)―11月23日(土・祝)
開館時間 | 午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで) |
観 覧 料 | 一般300円(団体20名様以上は一人200円) 中学生・高校生100円 |
休 館 日 | 日曜日・月曜日(祝日は開館)・9/17・9/24・9/26・10/15・10/24・11/5 |
編集委員 | 武藤康史(日本近代文学館理事) |
主 催 | 公益財団法人 日本近代文学館 |
編集者かく戦へり
原稿を取るのが大変だった――と編集者のあいだで語り伝えられる作家がいる。書くと言ったのに書かなかったとか、カンヅメにしたら逃げられたとか……。
雑誌に載せてもらうまで大変だった——と作家のあいだで語り伝えられる編集者もいる。作品をちっとも理解してくれなかったとか、何度書き直しても突き返されたとか……。
作品が世に出るまでには、作家と編集者のせめぎ合いがあった。やり取りの多くは口頭でおこなわれただろうが、文字で残ることがたまにある。昔は誰もがせっせと手紙を書いた。もちろん手書き。たいていはペン字。はずむ筆跡。悄気た筆跡。——こんな乱暴な字を書く人は本当はいい人だったかも? ——あまりにも端正な字の裏には怒りがあったのでは? ……などと想像がふくらむ。原稿の欄外に書き込みが残っていたり、作家の日記に何か書いてあったり、ということも……。
そういう資料を蔵出しした。編集者にしか見せない作家の顔がある。編集者しか知りえない舞台裏がある。百年にわたる資料がひしめくが、時代順ではなく、「原稿依頼」「承諾」「遅延の告知」「督促」「書けないという告白」「受け取り」「書き直し」「書き直し拒否」「感謝」「原稿料の支払い通知」「前借りの申し入れ」……など、なるべく編集者の仕事に沿って分けてみた。
いつの世も編集者は苦労ばかり。この苦労が文学史を作った。
(編集 武藤康史)
● 部門構成
第1部 すべては原稿依頼から始まる
主な出品資料:谷崎潤一郎 長田幹彦宛書簡、谷崎潤一郎 大道弘雄宛書簡、大橋乙羽 樋口一葉宛封書、川端康成 沖本常吉宛はがき、菊池寛 佐々木味津三宛封書、内田百閒 坂本一亀宛はがき、宇野千代 滝田樗陰宛封書、三島由紀夫 坂本一亀宛封書
第2部 編集者と作家のつばぜり合い
主な出品資料:丹羽文雄 橋中雄二宛封書、武者小路実篤 滝田樗陰宛はがき、河野多恵子 橋中雄二宛封書、水上勉 坂本一亀宛書簡
第3部 一つの作品が世に出るまでには……
宇野浩二「枯木のある風景」
主な出品資料:宇野浩二「枯木のある風景」草稿、宇野浩二 日記
福永武彦『愛の試み愛の終り』
主な出品資料:福永武彦 堀田珠子宛はがき
辻邦生『小説への序章』『城・夜』
主な出品資料:辻邦生 田辺園子宛はがき
中上健次「岬」
主な出品資料:中上健次「岬」著者校ゲラ、高橋一清「「岬」まで――中上健次 出発の周辺――」FAX原稿
高橋英夫「疾走するモーツァルト」
主な出品資料:坂本忠雄「髙橋英夫氏原稿感想」メモ、高橋英夫「疾走するモーツァルト」原稿コピー
吉村昭「生麦事件」
主な出品資料:吉村昭 坂本忠雄宛はがき
第4部 編集者に寄せられた敬愛と感謝、時には励まし……
「のっけていただけなくて残念です」——坂上弘は長年にわたって格闘した
主な出品資料:坂上弘 坂本忠雄宛封書
橋中雄二に寄せられた手紙
主な出品資料:丸谷才一 橋中雄二宛封書、吉本隆明 橋中雄二宛封書、橋中雄二 安岡章太郎宛封書、坂本一亀 橋中雄二宛封書
坂本一亀に寄せられた手紙
主な出品資料:神西清 坂本一亀宛はがき、高橋和巳「悲の器」原稿
編集者が書いた本、編集者について書かれた本
主な出品資料:田邊園子『伝説の編集者 坂本一亀とその時代』作品社 平成15(2003)年6月、高橋一清『編集者魂』青志社 平成20(2008)年12月
編集者が遊ぶとき
主な出品資料:第1回編集者歌謡曲大会実施要項
◆図録
9月14日より販売
当サイト内WEBショップのほか、お電話でもご注文いただけます。
電話 03-3468-4181
●展覧会記念講演会「編集者は見た!~作家と先輩たちの知られざる素顔~」
登壇:中瀬ゆかり(編集者・新潮社執行役員)
日時:10月14日(月・祝) 14:00~15:00 於:日本近代文学館 講堂
参加費:一般1000円、維持会・友の会会員600円、学生600円
※展示観覧料込。維持会・友の会会員の方は会員証を、学生の方は学生証を当日ご提示ください。
※事前予約制(定員60名。先着順。定員数に達した時点で受付を終了いたします。)定員に達したため受付終了しました(9月19日)
9月14日よりメールまたはお電話(03-3468-4181)でご予約を受け付けます。
同時開催 川端文学の名作Ⅱ
川端康成記念室では、川端康成の後期作品を紹介する「川端文学の名作Ⅱ」を開催致します。芸術院賞を受賞した「千羽鶴」、鎌倉の四季を背景に老年の心情を描いた『山の音』、京都の風情を美しく描いた「古都」などの魅力を原稿や初版本、当時の書簡など貴重な資料とともに紹介します。
また、「編集者かく戦へり」展に関連し、編集者としての川端康成の姿を、同人との書簡や、編集に携わった雑誌・書籍から辿ります。併せて、川端康成と編集者との交流の軌跡を、編集者宛ての書簡や回想記などから紹介します。
●千羽鶴 ●山の音 ●みづうみ
●東京の人 ●女であること ●眠れる美女 ●古都 ほか
*併設の川端康成記念室にて開催。特別展の観覧料(300円)で同時にご覧いただけます。