館の成り立ち
日本の近代文学は、明治以降、海外から押し寄せる新しい思潮や古くからの伝統がせめぎあう中で、また、関東大震災や戦禍、言論弾圧など数々の苦難をこえて、発展してきました。
こうした歩みを示すかけがえのない資料は、敗戦から立ち直り経済成長へ向かう、激しい社会の変遷の中で、散逸しつつありました。それを憂えた高見順、小田切進ら有志の文学者・研究者が、文学資料を収集・保存する施設の必要を広く訴え、1962(昭和37)年5月、設立準備会を結成、翌1963年4月、財団法人 日本近代文学館が発足しました。
その動きは大きな反響を呼び、15,000人にのぼる人から資料の寄贈や建設資金の寄付などの支援をいただいて、1967年4月、東京都目黒区駒場に、今の建物が開館しました。
当館はその後も、民間の財団として、文学者、研究者、文学や書物を愛する方々と、出版社、新聞社はじめ各界からの協力によって維持運営されています。
2007年9月、資料の増加にともない、千葉県成田市に分館を建設しましたが、その資金も、すべて募金によるものです。
当館は現在、図書や雑誌を中心に、数々の名作の原稿も含め、120万点の資料を収蔵するにいたりました。それらの資料を閲覧室や展示室で、また書籍や電子媒体として公開し、各種の講座・講演会を開催するなど、一般の読書家から専門の研究者まで、広くさまざまな要請に答えようと努めてきました。
2011年6月には公益財団法人の認定を受け、引き続き、近代文学に関する総合資料館、専門図書館として、文学資料の収集・保存・公開と文芸・文化の普及・発展のために活動しています。